電帳法(電子帳簿保存法)を意識して領収書のファイル名を付けるなら、基本となるのは「日付_取引先_金額」の順番で並べる形式です。たとえば「20240310_株式会社サンプル_11000」のように、西暦8桁・取引先名・金額(税込)の3つを区切り文字でつなぐ形が、検索要件を満たしやすい基本パターンとして挙げられます。
ただし「とりあえずこの順番にすればよい」というだけでは、後々表記ゆれなどでつまずくことがあります。この記事では、前提となる検索要件の確認から、具体的な手順、つまずきやすいポイント、ツールで対応する選択肢までを順番に解説します。
前提の確認:なぜファイル名に検索要件が関係するのか
電帳法では、電子取引データ(メールで受け取った請求書PDFや、ECサイトからダウンロードした領収書など)を保存する際に、一定の要件を満たす必要があるとされています。その一つが「検索要件」と呼ばれるもので、保存したデータを必要なときに探し出せる状態にしておくことが求められます。
国税庁の資料では、検索要件として次のような条件が挙げられています。
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索できること
- 日付または金額の範囲指定で検索できること
- 2つ以上の項目を組み合わせて検索できること
出典: 国税庁「電子帳簿等保存制度で経理のデジタル化」
検索要件は、専用のデータベースやシステムを使わなくても、ファイル名に「日付・取引先・金額」を規則的に入れ、フォルダ内の検索機能で絞り込める状態にしておくことで対応できるとされる場合があります。ただし、具体的な要件の充足可否は保存方法や運用状況によって異なるため、個別に確認が必要です。これが「ファイル名で検索要件に対応する」という考え方の前提です。
なお、国税庁の案内では、保存するファイル形式について「PDFに変換したものやスクリーンショットでも差し支えない」旨の記載があります。ただし、これは一般的な案内であり、個別の保存要件を満たすかどうかは実際の運用状況によって異なる場合があります。
出典: 国税庁「電子取引データの保存方法をご確認ください」
ここで一つ注意が必要なのは、電帳法の要件や適用範囲は改正によって変わることがある点です。本記事では確実に案内できる範囲のみを扱っていますので、最新の内容は、国税庁 電子帳簿保存法特設サイトでご確認ください。
手順:日付・取引先・金額の順でファイル名を組み立てる
ここからは、実際にファイル名を決めていく手順を順番に示します。
1. 並べる順番を決める(日付・取引先・金額)
基本形は「日付_取引先_金額」の順です。なぜこの順番がよく使われるかというと、フォルダ内でファイルを一覧表示したときに、日付順で自然に並び替えられるためです。日付を先頭に置くことで、ファイラーの並び替え機能だけで時系列を確認できます。
日付は「請求書の発行日」や「領収書に記載された日付」で統一するか、「実際に入金・支払いが確定した日」で統一するかを、社内(自分の運用)であらかじめ決めておくと迷いにくくなります。請求日と実際の送付日・受領日が異なるケースもあるため、どちらを基準にするかを先に決めておく手順が欠かせません。
2. 区切り文字を決める
項目の間を何でつなぐかも決めておきます。よく使われるのはアンダースコア「_」またはハイフン「-」です。どちらでも検索要件を満たすこと自体には影響しませんが、途中で混在させると表記ゆれの原因になるため、最初にどちらか一方に決めておく手順が重要です。
3. 法人格表記の扱いを決める
取引先名に「株式会社」「有限会社」などの法人格が入る場合、以下のどちらかに統一しておきます。
- 法人格を省略する(例:サンプル商事)
- 法人格を前株・後株含めてそのまま記載する(例:株式会社サンプル商事)
省略すると文字数が短くなり一覧性が上がる場合がありますが、同名の別法人(株式会社と合同会社など)が取引先に混在する場合は、法人格を残しておいた方が区別しやすいこともあります。自分の取引先構成に応じて、どちらかに決めてから運用を始める手順を踏んでおくと、後から直す手間を避けやすくなります。
4. 金額の書式を決める
金額は半角数字のみとし、「¥」や「円」、カンマ区切りは入れないルールにしておくと、検索・並び替えの際に扱いやすくなります。例えば「11,000円」ではなく「11000」と記載する形です。消費税込みの金額で統一するか、税抜金額で統一するかも、あらかじめ決めておく項目の一つです。
5. 実際のファイル名を組み立てて確認する
上記1〜4で決めたルールに沿って、実際に1件分のファイル名を作ってみます。
例:20240310_サンプル商事_11000.pdf
この1件を基準に、以降の領収書・請求書も同じ形式で統一していきます。
つまずきやすい点
ファイル名のルールを決めたつもりでも、実際に運用を始めると細かい表記ゆれが発生しやすい場合があります。あらかじめ押さえておくと迷いにくいポイントを挙げます。
以下のような表記ゆれは、フォルダ内検索での絞り込みに影響することがあるため、最初にルールを決めておくことが望まれます。
- 全角・半角の混在:数字や記号を全角で入力してしまうケースがあります。「2024」のような全角数字と「2024」のような半角数字が混在すると、検索時に表記の違いとして扱われることがあります。
- 取引先名の表記ゆれ:同じ取引先でも「(株)サンプル」「株式会社サンプル」「サンプル株式会社」のように異なる表記が混在すると、同一取引先として検索しづらくなります。
- 区切り文字の混在:途中からアンダースコアとハイフンが混ざると、検索・ソートの一貫性が崩れやすくなります。
- 日付の基準のブレ:請求日基準と入金日基準が混在すると、時系列での並び替えが崩れることがあります。
- 拡張子前の余分な文字:「_ver2」「_コピー」などが残ったままだと、同一書類が重複しているように見えてしまうことがあります。
これらは、ルールを紙やメモに1行書き出しておき、都度そのメモを見ながら命名するだけでも防ぎやすくなります。
索引簿を使う方法との違い
検索要件を満たす方法は、ファイル名の統一だけではありません。国税庁の資料では、ファイル名の代わりに「索引簿」と呼ばれる一覧表(Excelなどで取引年月日・取引先・金額・ファイル名を一覧化したもの)を作成し、そこから該当のファイルを探し出せるようにする方法も認められています。
ファイル名そのものに情報を詰め込む方法と、索引簿を別途作成してファイル名は簡素なままにしておく方法の、どちらを選ぶかは運用のしやすさで判断してよい部分です。ファイルの件数が少ないうちはファイル名方式、件数が多くなり一覧性を重視したい場合は索引簿方式、という使い分けを検討する事業者もあります。
いずれの方法を取るにしても、検索要件の詳細な適用条件(売上高に応じた例外など)は改正により変わる可能性があるため、最新の内容は、国税庁 電子帳簿保存法特設サイトでご確認ください。
ツールで楽にする選択肢
ここまでの手順は、領収書の件数が少ないうちは手作業でも対応できますが、件数が増えてくると、1件ずつファイル名を打ち直す作業自体が負担になる場合があります。こうした場合、ファイル名のルールを設定しておき、読み取った領収書データから自動でファイル名を生成するツールを使う方法も選択肢の一つとして挙げられます。
ツールの一例として、Zero-Renameというサービスについて、公開されている情報では、「{日付}_{取引先}_{金額}」の形式でファイル名を自動生成する機能が用意されている、と案内されています。区切り文字を「_」または「-」のどちらにするか、法人格表記を省略するかどうか、全角で入力された英数字を半角に統一するかどうかを、それぞれ設定で選べる、とされています。これはあくまで公開情報をもとにした一例であり、実際の仕様や利用可否は提供元の最新案内でご確認ください(仕様は変更される可能性があります)。
このサービスについて公開されている情報では、/app画面でAIが読み取った領収書の内容(日付・取引先・金額)を確認し、設定画面であらかじめファイル名の形式を選んでから保存すると、設定した形式に沿ってファイル名が生成される、という流れが案内されています。ただし、これは公開情報に基づく一例の紹介であり、実際の操作画面や挙動は利用時点の仕様によって異なる場合があります。ただし、AIによる読み取り結果は領収書の記載内容や画質などによって精度が変わる場合があるため、保存前に内容を確認する運用が前提となります。手作業で1件ずつ入力し直す手間を減らしたい場合、こうしたツールの利用も選択肢の一つになります。
なお、ファイル名の自動生成以外にも、クラウド会計ソフトの添付機能やファイル管理ソフトの一括リネーム機能など、検索要件への対応方法は複数存在します。自分の業務量や運用のしやすさに応じて、どの方法を使うかを検討するとよいでしょう。
勤怠管理や顧客管理など、他の業務の記録管理でデジタル化を検討している場合は、紙の勤怠管理からデジタルへ切り替える手順のような記事も参考になります。
まとめ
電帳法を意識した領収書のファイル名は、「日付_取引先_金額」の順を基本形として、区切り文字・法人格表記・金額の書式をあらかじめ決めておくことで、検索要件に対応しやすい状態を作れます。全角半角の混在や取引先名の表記ゆれといった細かい点は、最初にルールをメモしておくことで防ぎやすくなります。件数が増えてきた場合は、索引簿の作成やファイル名自動生成ツールの利用も選択肢として検討できます。
電帳法の検索要件や適用範囲の詳細、最新の改正内容については、国税庁 電子帳簿保存法特設サイトを必ずご確認ください。