カルテの個人情報漏洩が不安な個人店へ:「紙かデジタルか」より見直すべきこと
カルテに書いた個人情報が、お客様ご本人や、たまたま近くにいた他のお客様の目に触れてしまわないか——そんな不安を抱えている個人店のオーナーの方は少なくありません。結論からお伝えすると、見直すべきなのは「紙かデジタルか」という手段の違いよりも、カルテの内容を見られる人の範囲がきちんと区切れているかどうかです。紙でも適切に管理すれば情報は守れますし、デジタルに切り替えても画面の見せ方次第では誰でも見られる状態になってしまいます。本記事では、カルテの個人情報が漏れてしまう原因を整理したうえで、個人店でもすぐに取り組める対処法と、ツールで解決する際の考え方を紹介します。
カルテの個人情報漏洩が不安になる場面とよくある原因
まず、なぜ「カルテの個人情報が見られてしまうのでは」という不安が生まれるのか、原因を整理しておきます。原因が分かれば、対処の方向性も見えてきます。
受付票とカルテが同じ紙にまとまっている
個人店では、来店時に記入してもらう氏名・連絡先などの基本情報と、施術内容や体調、相談内容などのカルテ情報が、1枚の用紙にまとまっているケースがあります。この場合、受付のためにお客様へ用紙を手渡したり、お客様自身に記入してもらったりする過程で、本来はスタッフだけが把握しておきたいはずのカルテ内容まで目に触れてしまう可能性があります。
タブレットの画面をお客様も見られる状態になっている
紙からデジタルへ切り替えた個人店でも、似たような問題は起こります。受付や会計の際にタブレットの画面をお客様に向けたり、カウンター越しに画面が見える位置に置いていたりすると、そこにカルテの詳細情報が表示されたままになっている場合があります。お客様自身の情報であっても「見られたくない項目まで見えてしまう」ことは不安材料になりますし、他のお客様の情報が一瞬でも画面に残っていれば、より深刻な懸念につながります。
カルテの漏洩対策は「紙をやめてデジタルにする」ことが目的ではなく、「誰がどこまで見られる状態になっているか」を区切ることが目的です。手段を変えても、範囲が区切られていなければ不安は解消されません。
対処法:見られる範囲を区切る複数のやり方
ここからは、個人店でも無理なく始められる対処法を紹介します。いずれも「全部入れ替える」のではなく、今ある運用の一部を見直す形で取り組めます。
用紙を分ける(紙運用の場合)
受付票(氏名・連絡先・来店目的など)とカルテ(施術内容・体調・相談記録など)を、別の用紙に分けることが基本的な対処法です。受付票はお客様に記入・確認してもらう前提で作り、カルテはスタッフのみが記入・保管する用紙として分離します。保管場所も分け、カルテは施術スペースの奥や鍵付きの引き出しなど、お客様の動線から外れた場所に置くようにします。
紙の受付表そのものの管理に負担を感じている場合は、紙の受付表管理が大変なときの見直し方も参考になります。
画面を分ける(デジタル運用の場合)
タブレットやPCでカルテを管理している場合は、お客様に見せる画面と、スタッフだけが見る画面を分けることが対処法になります。例えば、会計や予約確認のためにタブレットをお客様に渡す場面がある店舗では、そのタブレットにカルテ画面が表示されないようにする、あるいは別の端末・別のモードに切り替えておく、といった運用が考えられます。
「ログイン中の画面をそのまま見せる」運用は、意図せずカルテ項目まで表示されてしまうことがあります。お客様に端末を手渡す前には、表示されている画面の種類を必ず確認する習慣を付けておくと安心です。
スタッフ間でも「見てよい範囲」を決めておく
個人店では、他のお客様に対してだけでなく、スタッフ間でも「誰がどこまで見てよいか」を決めておくことが望ましい場合があります。例えば、受付担当は氏名・予約内容までを扱い、施術内容や相談記録の詳細はカルテを担当するスタッフのみが見られるようにする、といった区分けです。人数の少ない個人店ではすべてを共有しがちですが、担当業務に応じて見える範囲を分けておくことで、不要な情報共有を減らせます。
紙からデジタルへ切り替える際も「範囲を区切る」視点を持つ
紙カルテの電子化を検討している場合、電子化そのものが漏洩対策になるわけではない点に注意が必要です。電子化しても、誰でもログインできる共通アカウントのまま運用していては、紙の時と同じ課題が残ります。電子化を検討する際の具体的な進め方は、紙カルテの電子化、個人院でもできるやり方でも解説していますので、あわせて確認してみてください。
ツールで解決する選択肢
用紙や画面を分ける運用は、意識付けだけでもある程度対応できますが、スタッフの入れ替わりや忙しい時間帯には徹底しづらい場合があります。そこで、受付用の画面とカルテ用の画面を最初から分けて設計されているツールを使う、という選択肢もあります。
ツールを選ぶ際に確認しておきたいポイントは次のとおりです。
- お客様向けの画面に、カルテ項目が表示されない設計になっているか
- スタッフ用の画面に切り替える際、誰でも操作できてしまわないか(認証の仕組みがあるか)
- カルテに書く項目を、店舗側で自由に設定できるか
こうした条件は、個人店向けの顧客管理ツールや受付台帳ツールの中にいくつか見られます。どのツールが合うかは店舗の運用によって変わるため、一つの選択肢として候補に入れつつ、実際の画面遷移を確認してから判断することをおすすめします。
「個人店のための受付台帳」の画面設計
こうした「見られる範囲を区切る」設計を備えたツールの一つに「個人店のための受付台帳」があります。このツールには、カルテ項目として指定した内容を、お客様用モードの画面では表示対象から外す設定機能があります。表示されるかどうかは設定内容や運用方法によって変わるため、導入時には実際の画面表示を確認することが推奨されます。また、スタッフ用モードへの切り替えにはPIN認証の仕組みが用意されています。PIN認証はあくまで画面切り替えの一手段であり、PINの管理方法や運用状況によっては、第三者がスタッフ用モードの内容を目にする可能性が残る点には留意が必要です。
具体的な操作としては、台帳設定の画面で項目を追加・編集する際に、各項目に対して「カルテ項目」として指定するチェック項目が用意されています。このチェックを入れた項目は、お客様用モードでは表示対象から外れ、スタッフがPIN認証でスタッフ用モードに切り替えたときのみ表示される仕組みです。この仕組みにより、受付のためにお客様へ端末を手渡す場面でカルテ内容が意図せず見えてしまう可能性を減らせる場合がありますが、実際の効果は設定内容や運用方法によって変わります。
紙の受付票とカルテを分けるのと同じ考え方を、デジタル上の「モードの分離」で実現している点が、このツールの設計の特徴です。手段がデジタルになっても、目的は「見られる範囲を区切ること」である点は変わりません。
もちろん、個人店向けの顧客管理・受付管理ツールは他にも存在します。どのツールを選ぶ場合でも、「お客様用の画面とスタッフ用の画面が分かれているか」「切り替えに何らかの認証が必要か」「カルテ項目を自店舗の運用に合わせて指定できるか」という3点を確認すると、見られる範囲を区切れているかどうかを判断しやすくなります。
まとめ:見直すべきは「手段」より「範囲」
カルテの個人情報漏洩が不安なときにまず見直すべきは、紙かデジタルかという手段の違いではなく、カルテ内容を見られる人の範囲が区切れているかどうかです。
- 受付票とカルテが同じ紙にまとまっていないか
- タブレットの画面をお客様が見られる状態になっていないか
- スタッフ間でも見てよい範囲が決まっているか
これらを一つずつ確認し、必要に応じて用紙や画面を分ける運用に見直すことで、不安の原因となっている「誰が見られるか分からない状態」を減らしていくことができます。運用での対応に限界を感じる場合は、お客様用とスタッフ用の画面があらかじめ分かれているツールを選択肢の一つとして検討してみてください。
なお、個人情報の取り扱いに関する制度面での疑問がある場合は、個人情報保護委員会の相談窓口も利用できます。個人情報保護法相談ダイヤルでは、事業者における個人情報等の取扱いに関する相談を受け付けています。