退去立会いアプリを選ぶときにまず見るべきポイントは、(1)写真や音声での記録のしやすさ、(2)入居者・貸主からの署名のもらいやすさ、(3)月額や件数制限を含めた価格、の3点です。この3点を比較軸にして、管理している戸数や立会いを担当する人数に合わせて選ぶことで、記録漏れやサインのもらい忘れといったトラブルの芽を減らせる場合があります。本記事では、この3つの基準を軸に、退去立会いアプリの選び方を具体的に整理していきます。
退去立会いアプリの選定基準は「記録のしやすさ」「署名のもらいやすさ」「価格」の3点です。まずこの3つを比較してから、自社の管理戸数・担当人数に合うかどうかを確認するという順番がおすすめです。
退去立会いアプリを選ぶときに見るべき観点
退去立会いの現場では、入居者の立ち会いのもと、壁・床・設備などの状態を確認し、原状回復費用の負担区分を記録していく作業が発生します。この記録が曖昧だったり、入居者の同意(署名)が取れていなかったりすると、後から「言った・言わない」のトラブルに発展することがあります。負担区分の考え方自体に迷う場合は、原状回復の負担区分が分からないときの考え方と確認手順もあわせて確認しておくと判断の軸が整理しやすくなります。
アプリを選ぶ際は、次の観点で検討することが基本になります。
これらを踏まえたうえで、次章からは「退去立会い アプリ 比較」の具体的な軸を見ていきます。
退去立会い アプリ 比較で見るべき4つの軸
軸1: 写真と音声での記録のしやすさ
退去立会いでは、部屋の各部位(壁・床・設備など)の状態を1つずつ確認しながら記録していく必要があります。その場で担当者がメモを取りながら写真を撮る方式だと、どの写真がどの部位の記録かが後から分かりにくくなることがあります。写真を撮りながら、その部位についての所見を音声で記録できる機能があれば、入力の手間を減らせる可能性があります。また、現場の日報作成でも音声入力を活用する動きがあり、現場の日報を音声入力できるツールの選び方でも同様の考え方を扱っています。
軸2: 経年劣化を踏まえた金額計算への対応
原状回復費用は、入居者の故意・過失による損耗か、通常の使用による経年劣化かによって負担者が変わります。国土交通省のガイドラインに関する相談対応事例集でも、退去時のトラブルに関する質問が章立てで整理されており、負担区分の判断が実務上の論点になっていることがうかがえます出典: 国土交通省。アプリによっては、経過年数を入力すると負担割合や金額の目安を自動的に算出する機能を持つものもあります。ただし、算出される数値はあくまで目安であり、実際の負担割合や金額は物件の契約内容や特約、劣化の状態によって異なるため、最終的には個別に確認する必要があります。こうした機能の有無や、算出根拠が明示されているかどうかも比較軸の一つになります。
軸3: 署名方法(現地・リモート)
立会い当日にその場で入居者・貸主双方の署名を得られるかどうかは、後のトラブル防止につながると考えられます。ただし、退去者が立会い当日に不在で、後日リモートで確認・署名してもらう必要があるケースもあります。現地でのタブレット署名だけでなく、リモートでの署名確認に対応しているかどうかも確認しておくとよい項目です。
軸4: 価格(無料範囲と有料プランの条件)
立会い件数が少ない事業者であれば無料プランの範囲内で収まる場合もありますが、件数が増えると有料プランへの移行が必要になります。比較の際は、月額料金そのものだけでなく、無料プランで何件まで使えるか、カード登録が必要かどうかもあわせて確認しておくとよいでしょう。これらの条件を事前に把握しておくことは、導入後に料金面で想定と異なる点に気づきにくくなるのを防ぐための確認ポイントの一つになります。
価格を比較する際は、月額料金の数字だけでなく「無料プランの件数上限」「有料プランへの移行条件」「カード登録の要否」まで確認しておくことをおすすめします。
管理戸数・担当人数別の選び方
退去立会いアプリは、管理する戸数や立会いを担当する人数によって、重視すべき点が変わってきます。
管理戸数が少ない(数十〜数百戸規模)場合
立会い件数自体が月に数件程度であれば、まずは無料プランの範囲で試してみて、記録のしやすさや署名のもらいやすさを実際の現場で確認するという進め方が考えられます。多機能な管理システム全体を導入するよりも、退去立会いの記録に絞った軽量なアプリを選ぶという考え方もあります。扱う機能の範囲が限定されている分、操作に慣れるまでの負担が軽く感じられると話す担当者もいますが、感じ方には個人差があります。
管理戸数が中規模(数百〜2,000戸程度)の場合
立会い件数が増えてくると、月額の有料プランに切り替える前提で比較する必要があります。この規模感では、複数の担当者が同じフォーマットで記録を残せるかどうか(属人化を避けられるか)も選定のポイントになります。
管理戸数が大規模(2,000戸超)、または全社的なシステム連携が必要な場合
管理戸数が非常に多い、あるいは入居者管理・契約管理・会計システムなどと一体化した運用を求める場合は、退去立会いの記録に特化したアプリ単体では機能が不足することがあります。この場合は、より大規模な賃貸管理システム全体の導入を検討する方が合う場合もあります。
立会いを複数人・複数拠点で担当する場合
担当者が複数いる、あるいは複数の拠点で立会いを行っている場合は、記録フォーマットが統一されているかどうか、また誰がいつ記録したかを後から確認できるかどうかも確認しておくとよい点です。複数拠点での記録管理が煩雑になりやすいという課題は、複数営業所の酒気帯び確認、管理が大変な理由と見直し方で扱っている内容とも共通する部分があります。
退去立会いアプリの選択肢の一つ「退去レポ」
ここまでの比較軸を踏まえたうえで、選択肢の一つとして「退去レポ」という賃貸管理 アプリを紹介します。退去レポは、提供元の説明によると管理戸数2,000戸以下の賃貸管理会社を主な利用イメージとして想定しており、次のような機能を持っています。
- 写真と音声での記録に対応し、記録した内容をもとにAIが点検項目の候補を提案するとされる機能(提案の精度や対応範囲は利用状況によって異なり、最終的な確認は利用者が行う仕様)
- 現地での署名、および後日のリモート署名の両方に対応
- 点検確認書をPDFで出力する機能
価格については、本記事執筆時点の情報として、無料の範囲は月3件までで、利用開始時のカード登録は不要です。無料範囲を超える場合の有料プランは月額980円(税込)です。最新の料金体系や適用条件は公式サイト等で確認することをおすすめします。
退去レポは、退去立会いの記録に機能を絞って作られています。入居者管理・契約管理・家賃入金管理といった、賃貸管理業務全体を網羅する機能は持っていません。全業務をひとつのシステムでまとめて管理したい場合は、この点を踏まえて他の選択肢とあわせて検討する必要があります。
退去レポはあくまで選択肢の一つであり、本記事で挙げた比較軸(記録のしやすさ・署名方法・価格)に照らして、他のアプリや自社の既存システムとあわせて比較検討することをおすすめします。
まとめ
退去立会いアプリを選ぶ際は、(1)写真と音声での記録のしやすさ、(2)経年劣化を踏まえた金額計算への対応、(3)署名方法(現地・リモート)、(4)価格(無料範囲と有料プランの条件)という4つの軸で比較することが基本になります。そのうえで、自社の管理戸数や立会いを担当する人数に合わせて、退去立会いの記録に特化したアプリにするか、より大規模な賃貸管理システムにするかを判断していくことになります。
退去時のトラブルを避けるための基本的な考え方については、原状回復の負担区分が分からないときの考え方と確認手順や原状回復の特約トラブル事例から見る注意点【管理会社向け】もあわせてご確認ください。